お初天神(三)
碑の「曽根崎心中・ゆかりの地」娘子ひそと掌をあはせをり
(いしぶみの「そねざきしんじゅう・ゆかりのち」おとめごひそとてをあわせおり)
-同人誌掲載-
浄瑠璃の『曽根崎心中』の背景の季節は初夏なのですが、私には何故か、
この時雨が降る11月の終りの頃が自分の好きなイメージに合うように思うのです。
『あっ、あの影はもしかしてお初?』、時雨降るお初天神の辺りで、
傘を半開きにして前をよぎったあの姿はそんなことを思わせてしまいます。
由緒の碑めぐり清かにととのへて紅き椿はお初に相応ふ
(ゆかりのひめぐりさやかにととのえてあかきつばきはお初にふさう)
-同人誌掲載-
ここに来たからといって何かが癒されるというわけでもなく、また
昔のひとに遇えるという希みがあるわけでもなく、暮れたばかりの境内の
しんとした冷たい空気、社務所が申し訳程度に照らしている灯りの中で、
街の喧騒が少し和らいで、時折りお参りする人たちの靴音が、
玉砂利の上に響くだけ、そんな曽根崎新地のはずれ、露天神社の穏やかな空間が、
今の私には一番やさしい場処のような気がするのです。
曽根崎のお初徳兵衛道行きの影がよぎるや灯る裏店
(そねざきのお初とくべえみちゆきのかげがよぎるやともるうらだな)
-同人誌掲載-
お初天神(一):2008年11月09日掲載
お初天神(二):2008年11月19日掲載
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