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黄色い薔薇

わたしを探さないで五月黄色いバラとゆくから音もなくゆくから
(わたしをさがさないでごがつ きいろいばらとゆくからおともなくゆくから)

                                       歌集『ガラスの靴』より

 

五月の花園は薔薇の香りであふれている。色とりどりの豪華な薔薇が惜しげもなく
その美しさをひらき、艶やかに競い合っている。 人々はその薔薇の小道を辿りながら、
少ない語彙を取り集めて賛嘆の声を上げる。
その人々に紛れて私は、今年もあの薔薇に逢いにゆく。
目指すはその太陽のような明るい、曇りのない、華やかで力強い黄色の薔薇

 

かつて、私の恋人は黄色い薔薇。五月の太陽のように私を輝かせ、
腕に抱えきれないほどの希望を抱かせてくれた。そう、あなたと共にゆくのだ! 
何者も恐れず、何物にもひるまず、風が楽のように響く空を共に翔ることを確信していた。
一点の曇りもなく、飛び立つことを信じていた。
そう、あれから幾つの五月を迎え、見送っただろうか。
それでも決して疑うこともなく確信は揺らがなかった。

 

そして、今こうして過ぎ去った夢の襤褸をまとい、
風が嵐のように吹く世界に佇んでいることに気付いた今でも、
あの五月の、耳元にささやいた黄色い薔薇の鮮やかな言葉は、
一筋の光となって来るべき五月へ私を誘おうとしている。

 

         ・・・・・    ・・・・・    

パトリシア・コーンウェル著、女検視官:Dr.ケイ・スカーペッタが主人公の「検視官」シリーズ
の一冊【スカーペッタ】から

 

===引用1(上巻130頁)===
・・・『黄色を選んだのは神経のこまやかさを示してるから。
昔ながらの真っ赤な薔薇はあえて選ばなかった。すてきよね。・・・テリーの恋人ってだけじゃなく、
友だちでもあるんだって宣言してるみたいな感じでね。・・・黄色は力強いわ。黄色い薔薇を見ると、
心が太陽の光りでいっぱいになる』

 

===引用2(下巻370頁)===
・・・「黄色ね」  ベンは枯れた薔薇には露ほどの
関心も示していない。女の目から見ると、黄色であることが重要な意味を持つことも理解していない。
バカルディ(=女警官)の安心したいという欲求は、薔薇なら赤がいいと即答したが直感は
冷静に考えてから答えた。黄色い薔薇をくれるような男はめったにいない。
だが、そのめったにいない男こそ理想の相手で、巡り合うような幸運に恵まれたら、
どんなことをしてでも自分のものにするべきだ。(後略)

 

 

 

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